昔から日本には、三者間で損益を均等に享受することを美徳とする文化があります。
一例として、「近江商人の三方よし」があります。「近江商人の三方よし」は「買い手よし、売り手よし、世間よし」のことであり、「商いは、自らの利益のみならず、顧客や社会にとっても効用(満足度)が高いものであるべきだ」という近江商人の活動理念であり、20世紀初頭に広く知られるようになったといわれています。
別の例として、有名な古典落語の1つである「三方一両損」があります。これは、次のようなストーリーです。
三両のお金の入った財布を拾った左官が、それを持ち主の大工へ返そうとするものの、それはもう左官のものであるという理由で大工はそれを受け取りません。これを調停するため、大岡越前守(調停者)が一両を足して併せて四両とし、左官と大工へ二両ずつを渡すことで解決します。左官と大工はそれぞれ手に入れるべき三両が二両に減り、大岡越前守には想定外に一両の支出が発生したので、それぞれ平等に一両損したことになります。奇妙な話ではありますが、一理ありますよね。
これらの例に見られるように、「皆で等しく損益を共有・分配する」という考え方が古くより日本の社会に根付いており、現代のSDGsと軌を一にするのではないでしょうか。
セブンスカイズ株式会社
グローバル・エンタープライズ執行役員
鳥生英俊(とりう・ひでとし)